夜とは、永劫闇へと溶けていく生物である。朝と昼間の勢力に、うろたえながら。
 夜の帳が、少女へかぶさろうとする。満水のバケツをひっくり返したように、放射線を
 したたらせながら、少女を抱きしめようとしている。
 真っ白の少女は、爪先が光っている。少女とは、発光する生物だ。
 少女が夜と手をつなぐのは、自分を一番美しく魅せるための術なのだと。
 夜が少女と手をつなぐのは、柔いその身体にふれるためなのだと。
 互いは、契りを交わす。
 やがて。
 もつれ合う両者は、今、どちらがどちらであるのか曖昧になり、その浮遊感に酔う。少女は、腰まで
 伸びている髪をふり乱している。夜は、少女の背を撫で、やがて、それは腰へと向かう。
 そして、終点が目と鼻の先に来たことを、同時に感じとる。少女は夜に接吻し、夜は少女の身体に
 ぴたりと寄り添う。やがて、目の前にだんだん広がるは、琥珀の円。これは月か、それとも、ただ目の
 前にぽかりと開いた穴か。どちらにせよ、互いにとって問題ではないことに変わりはない。
 どちらが先にふれるのか、もしくは、それが同時であることを祈りながら、吸い込まれていく。