家賃の安さだけが魅力のアパート

    君は二階住み  僕は一階住み

    君が来るぶんは、少し楽だね



    目覚まし時計はとうに止めていて

    君は怒ったふりで布団をはぎとる

    動こうとしない僕にため息をついて

    さあ、今日の始まりの匂いを作って



    ひとりぶんは卵二個で

    塩と胡椒、砂糖は入れないで

    油もバターも使うから  焦げめができる



    毎朝オムレツを作りに来て

    毎日君を引き止めておくために

    忘れないで「君を愛してる」

    僕はそれだけは怠けないよ



    着替えもしていない僕は  フライパン回す君に夢中

    君は真面目な顔で  僕はだらしない顔

    寝ころびながら、隣の部屋で待つ



    愚痴をこぼしながら、ため息をつきながら

    なんだかんだ言ったって、作ってくれるんだね

    僕はそれがいつもうれしいんだよ

    「ほら、できたよ」ってもう一度起こしてよね



    白身をちゃんと切ってかき混ぜて

    ああ、それと牛乳も忘れないで

    玉子をまとめる前には  空気をふくませてね



    毎朝オムレツを作りに来て

    毎日君を引き止めておくために

    忘れないで「君を愛してる」

    僕はそれだけは怠けないよ



    これから、先も……

    それこそ、わがままかな



    毎朝オムレツを作りに来て

    毎日君を引き止めておくために

    忘れないで……

    僕はそれだけは怠けないよ



    約束だよ、ね






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